静悟の文学的空間

小説、読書感想、宮座賢治などについてのブログ

小説

桜舞い散る今日この頃

ひらりと桜の花びらが窓から舞い込んできた。どこから来たのだろうと不思議に思った。近所には桜が咲いているところなんてないのに。寝転がっていた床からむくりと起き上がり、水を飲んだ。今日は何日だっけな?そうだ、今日から四月だった。寝てばかりいた…

とある読書家の話

人間よりも本が好きだ。その事に僕が気がついたのは23の時だった。思い返してみれば、今までどんな人間にも共感を感じたことがなかった。それは僕が特別なんだろうと思っていた。だけど、もしかしたら僕は人の姿をした人でない何かなのかもしれない。とに…

ライトメモリー3

誰かに感動を届ける。生きる心支えとなるような作品を創る。あのカフェでボーカルのお姉さんの話を聞いてからそういう目標ができた。だけど僕に何ができるだろうか? 偶々立ち寄った本屋で詩集のコーナーが目についた。パラパラとめくってみる。中には素敵だ…

ライトメモリー2

僕の日常 ライブ 僕の日常 僕の毎日は仕事としての他者へのヒーリング、後、自らの体へのセルフヒーリングと、それから記憶を取り戻すことに没頭する事、この3点を中心に今のところ回っていた。この生活にそれなりに満足している。今日もヒーリングを全て済…

ライトメモリー

失われた記憶 親切なお姉さん 御幸さんのヒーリングについて 記憶を取り戻すということについて 失われた記憶 どこだろう、僕の居場所は。なぜ僕はここに存在しているのだろうか?思い出せないくらい遠い記憶が僕の中には確かにある。 縄文人古代人であった…

森の住人1話 童心に帰る

深い瞑想を終えて、僕はゆっくりと体を起こした。テントから出ると朝日がまぶしい。まだ早朝だから皆寝ているのだろう。キャンプ場の早朝を独り占め出来た気がして嬉しかった。最近は体調が良い。体操を終えて顔を洗う頃にはもう完全に目が覚めていた。実に…

僕らの旅路16 新たなる旅路

半年が経った。この間、僕と綾と愛衣先生の日常は大抵変わりなかった。僕はブログで詩を書いたり、図書館や公園で本を読んだり、綾と愛衣先生は勉強を教わったり、公園でバトミントンをしたりしていた。次第に綾の心は回復の兆しを見せていったように思う。…

黒猫物語2 図書館という選択肢

翌日僕は図書館にいた。星の王子さまの原文版と何冊か小説を借りた。そして昼間はずっと図書館のソファに座って読んでいた。12時頃お腹が空いたので近くの弁当屋で昼食を買って、中庭で食べていると、鳩が弁当を狙って足元をうろつき出した。さすがにここ…

黒猫物語

月灯の下でドイツ語の勉強をしていると、ふと気になって窓の外をい見た。12月の寒気が広がる夜の暗闇は静かで、人気がない。何となく散歩でも行くかという気になった。寒さに思わずジャケットで包んだ身体を抱きしめた。どこへ行くかな。真珠庵公園でも行…

孤人物語 完

紫と青を混ぜて描いていた。絵を書けば何かが変わるのではないかと思った。鴨川と大文字山の森を描いていた。何十枚も描いて、何となく創作を中断し、料理を作ることにした。豆腐と魚の味噌汁をさっと簡単に作って、じいちゃんのいなくなった座卓で食してい…

孤人物語 

山をひたすら登っていた。透き通る水面を眺めながら立ち止まっていた。山中他界。湧き水が飲める場所があった。自販機のペットボトルの水とは全然口当たりが違う。ほんの少しだけ煮詰まった脳が軽くなった気がした。 体力の限界は遥かに超えていた。頂上まで…

孤人物語 僕という人間

天涯孤独 いつものように自室のゆったりとしたソファに深く沈み込んで何時間も集中して本を読んでいると、目の前の山積みの書物から一冊がドサッとこぼれ落ちた。何が落ちたのかなと思って見てみると、漱石のこころだった。こころは漱石の中で一番気に入って…

穏やかな陽

暖かな陽だまりの中彼方さんは陽気に散歩に出かけた。アパートの裏に広がる森を抜けてゆく。陽の光の暖かさを感じながら、昨日ネットで見た葉についての知識を光を反射する葉達を仔細に観察してみた。つぼみと芽と木々の葉の生え方、葉の形について。やはり…

僕らの旅路15 絵本を読んで

せっかく出会えた良き先生と直ぐに別れさせるような事はしたくなかったので、いずれ旅立にせよ、しばらくはこの地に逗まる事に決めた。近頃、以前にも増すペースで愛衣先生はは綾の下へ授業にやってきてくれている。今日も夕方から愛衣先生は僕らのマンショ…

僕らの旅路14 綾と空のこの土地での毎日

悪夢 ハッと目を覚ますと夜中だった。昔の夢を見てしまった。あの忌まわしき実家にいた頃の夢。私を殴る母親とそれを眺めている義理の父親。こんな夢を見たのは久しぶりだ。怖くなって、辺りを伺うと、いつも通り変わらないマンションの自分の部屋だった。 …

インディゴチャイルド12 お姉さんがやってきた

僕の家にご招待 「へえ~。ここが和君のお家か」 「うん。どうぞ、入ってよ」 離れていたのは少しの間だったはずだけど、何だか一年くらい離れていたように感じた。いざ、家の中に入るとお姉さんは興味ぶかそうに家の中を見回していた。ガチャッとドアを開け…

インディゴチャイルド11 お姉さんの新しい家へ

お姉さんとの再会 山を降りて、IPHONEのマップアプリを片手にお姉さんのマンションへと向かった。住所によると、どうやらお姉さんのマンションは、山から電車で一時間程の所にあるらしい。この距離なら僕が住んでいたあの家からもそう離れていない。お姉さん…

インディゴチャイルド10 お姉さんの声

下山して部屋に戻って考えていた。あの時山頂で聞こえた声は間違いなくお姉さんの声だった。もう何年も会ってなくても聞き間違えることはない。今どうしているだろう?猛烈に今お姉さんがどうしているか気になった。 あれから何年もそれこそ僕が大きくなるま…

インディゴチャイルド9 僕を救い出してくれた魔法使いの女の子の話

父親による虐待 昔の夢を見た。父親に頬を殴られて公園でひとしきり泣き叫んだ後の事だった。 家に帰りたくない。だけど外も寒い。その頃の僕は9歳くらいだっただろうか。歩いて行ける川まで行って溺れて死んでしまおうかと考えていた時だった。 「どうした…

インディゴチャイルド8 山頂での出会い

植物園 セコイア並木をくぐりぬけた所にある高知の植物園に僕はやってきていた。鮮やかな花々達に癒やされ、樹木達が発する静かな空気に落ち着き、疲れた心と身体を休めることができた。今日のところはここでゆっくりと休んで宿へ帰るとしよう。 四国にはお…

インディゴチャイルド7 自分を探す旅

鑑定を受けてから大体一ヶ月が過ぎた。この間、僕は図書館に足繁く通ってはいろんな知識を吸収することに専念していた。主に文学、仏教、自然科学の分野の本を読み漁っていた。勿論、旅先の情報収集も怠らなかった。気分転換に朝夕の散歩も日課として行って…

インディゴチャイルド6 麗先生の鑑定

紫苑鑑定所は家から30分程の距離にある街中の一角にあった。到着する前、タクシーに乗っている間も頭の中は鑑定師に相談したいことで一杯だった。20分の間に何を優先して視てもらうべきか考えたのだが、やっぱり僕は過去の前世の事より未来の事を知りたいと…

インディゴチャイルド5 霊視鑑定を受けることについて

そして、僕は図書館に来ていた。何となく、四国とかいいかもしれないなと思う。暖かそうだし、自然も豊かだ。 図書館の旅行系のコーナーで立ち読みしながら四国の美味しそうなうどんの写真を見て、今日は暖かい物を食べたいなと夕飯のメニューを考えていた。…

インディゴチャイルド4 不思議な夢と旅の再開

家に帰って考える 結局あの後お腹いっぱいまで会場の料理を楽しんで、ちょっとしたピアノ演奏や、講演なども開催されていたらしいのだが、僕としては予想外の女性達との出会いで満足してしまったので、9時になる前にタクシーに乗って早々に帰ってきた。お風…

インディゴチャイルド4 不思議な夢と旅の再開

家に帰って考える 結局あの後お腹いっぱいまで会場の料理を楽しんで、ちょっとしたピアノ演奏や、講演なども開催されていたらしいのだが、僕としては予想外の女性達との出会いで満足してしまったので、9時になる前にタクシーに乗って早々に帰ってきた。お風…

透子物語

神の視点 雲がどこまでも一面に広がっている。ここは霊界。とある神の住まう場所であった。まだ新米の神である霊人はその一面に広がる雲に寝転がっていた。そんな時、何故かふと下界の様子が気になったので、遥か下の方に広がる世界を手元の水晶で覗いてみた…

インディゴチャイルド3 不思議な夜

魚を捌く、そしてこれからのこと 小さな魚だったので簡単なさばき方、内臓を取り出してフライパンで両面を焼くだけの本当にごく簡単な調理だったけど、ただ塩で味付けするだけでも不思議なほど満足感を得れたのだった。やはり自給自足という生き方が僕には合…

僕らの旅路13 僕らの関係

初授業 「じゃ、ここ訳してみて?」 「知識があった方がありとあらゆる場面で役に立つ。だから学生は寸暇を惜しんで勉強すべきなのだ」 「うん。正解」 今日も愛衣先生に英語を教えてもらっていた。 「ちょっと休憩しようか」 「うん」 私はリビングへ行って…

僕らの旅路12 如月愛衣の辿った道

図書館での日々 学校に行かなくなり、図書館で過ごすようになってから大体3年程が過ぎた。気がつくと私も中学生に上がるくらいの年になっていた。年齢で言うと14歳くらい。 その頃に一人の先生と出会った。今の私があるのは間違いなく先生のおかげで、人…

僕らの旅路11 如月愛衣という女性

如月先生の初授業 窓から差し込んでくる日光と共に目が覚めた。リビングへ行くとまだ綾は起きてなかった。歯を磨き、顔を洗って、リビングのカーテンを開けると暖かい陽の光が入ってきた。今日はいい天気だから公園に行きたいな。 綾が目覚めるまでソファに…