静悟の文学的空間

小説、読書感想、宮座賢治などについてのブログ

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

孤人物語 僕という人間

天涯孤独 いつものように自室のゆったりとしたソファに深く沈み込んで何時間も集中して本を読んでいると、目の前の山積みの書物から一冊がドサッとこぼれ落ちた。何が落ちたのかなと思って見てみると、漱石のこころだった。こころは漱石の中で一番気に入って…

穏やかな陽

暖かな陽だまりの中彼方さんは陽気に散歩に出かけた。アパートの裏に広がる森を抜けてゆく。陽の光の暖かさを感じながら、昨日ネットで見た葉についての知識を光を反射する葉達を仔細に観察してみた。つぼみと芽と木々の葉の生え方、葉の形について。やはり…

僕らの旅路15 絵本を読んで

せっかく出会えた良き先生と直ぐに別れさせるような事はしたくなかったので、いずれ旅立にせよ、しばらくはこの地に逗まる事に決めた。近頃、以前にも増すペースで愛衣先生はは綾の下へ授業にやってきてくれている。今日も夕方から愛衣先生は僕らのマンショ…

僕らの旅路14 綾と空のこの土地での毎日

悪夢 ハッと目を覚ますと夜中だった。昔の夢を見てしまった。あの忌まわしき実家にいた頃の夢。私を殴る母親とそれを眺めている義理の父親。こんな夢を見たのは久しぶりだ。怖くなって、辺りを伺うと、いつも通り変わらないマンションの自分の部屋だった。 …

インディゴチャイルド12 お姉さんがやってきた

僕の家にご招待 「へえ~。ここが和君のお家か」 「うん。どうぞ、入ってよ」 離れていたのは少しの間だったはずだけど、何だか一年くらい離れていたように感じた。いざ、家の中に入るとお姉さんは興味ぶかそうに家の中を見回していた。ガチャッとドアを開け…

インディゴチャイルド11 お姉さんの新しい家へ

お姉さんとの再会 山を降りて、IPHONEのマップアプリを片手にお姉さんのマンションへと向かった。住所によると、どうやらお姉さんのマンションは、山から電車で一時間程の所にあるらしい。この距離なら僕が住んでいたあの家からもそう離れていない。お姉さん…

インディゴチャイルド10 お姉さんの声

下山して部屋に戻って考えていた。あの時山頂で聞こえた声は間違いなくお姉さんの声だった。もう何年も会ってなくても聞き間違えることはない。今どうしているだろう?猛烈に今お姉さんがどうしているか気になった。 あれから何年もそれこそ僕が大きくなるま…

インディゴチャイルド9 僕を救い出してくれた魔法使いの女の子の話

父親による虐待 昔の夢を見た。父親に頬を殴られて公園でひとしきり泣き叫んだ後の事だった。 家に帰りたくない。だけど外も寒い。その頃の僕は9歳くらいだっただろうか。歩いて行ける川まで行って溺れて死んでしまおうかと考えていた時だった。 「どうした…

インディゴチャイルド8 山頂での出会い

植物園 セコイア並木をくぐりぬけた所にある高知の植物園に僕はやってきていた。鮮やかな花々達に癒やされ、樹木達が発する静かな空気に落ち着き、疲れた心と身体を休めることができた。今日のところはここでゆっくりと休んで宿へ帰るとしよう。 四国にはお…

インディゴチャイルド7 自分を探す旅

鑑定を受けてから大体一ヶ月が過ぎた。この間、僕は図書館に足繁く通ってはいろんな知識を吸収することに専念していた。主に文学、仏教、自然科学の分野の本を読み漁っていた。勿論、旅先の情報収集も怠らなかった。気分転換に朝夕の散歩も日課として行って…

インディゴチャイルド6 麗先生の鑑定

紫苑鑑定所は家から30分程の距離にある街中の一角にあった。到着する前、タクシーに乗っている間も頭の中は鑑定師に相談したいことで一杯だった。20分の間に何を優先して視てもらうべきか考えたのだが、やっぱり僕は過去の前世の事より未来の事を知りたいと…

インディゴチャイルド5 霊視鑑定を受けることについて

そして、僕は図書館に来ていた。何となく、四国とかいいかもしれないなと思う。暖かそうだし、自然も豊かだ。 図書館の旅行系のコーナーで立ち読みしながら四国の美味しそうなうどんの写真を見て、今日は暖かい物を食べたいなと夕飯のメニューを考えていた。…

インディゴチャイルド4 不思議な夢と旅の再開

家に帰って考える 結局あの後お腹いっぱいまで会場の料理を楽しんで、ちょっとしたピアノ演奏や、講演なども開催されていたらしいのだが、僕としては予想外の女性達との出会いで満足してしまったので、9時になる前にタクシーに乗って早々に帰ってきた。お風…

インディゴチャイルド4 不思議な夢と旅の再開

家に帰って考える 結局あの後お腹いっぱいまで会場の料理を楽しんで、ちょっとしたピアノ演奏や、講演なども開催されていたらしいのだが、僕としては予想外の女性達との出会いで満足してしまったので、9時になる前にタクシーに乗って早々に帰ってきた。お風…

植物園に行って思ったこと

植物園に行くととても落ち着く まるで第二の家のようだ そこで僕は必ずと行っていいほど賢治の詩を思い出します 生徒諸君に寄せるの詩人へのエールのような言葉の羅列を思い出す 光から雲から受け取る透明なエネルギーとはどんなものか 是非僕も味わってみた…

透子物語

神の視点 雲がどこまでも一面に広がっている。ここは霊界。とある神の住まう場所であった。まだ新米の神である霊人はその一面に広がる雲に寝転がっていた。そんな時、何故かふと下界の様子が気になったので、遥か下の方に広がる世界を手元の水晶で覗いてみた…

インディゴチャイルド3 不思議な夜

魚を捌く、そしてこれからのこと 小さな魚だったので簡単なさばき方、内臓を取り出してフライパンで両面を焼くだけの本当にごく簡単な調理だったけど、ただ塩で味付けするだけでも不思議なほど満足感を得れたのだった。やはり自給自足という生き方が僕には合…

僕らの旅路13 僕らの関係

初授業 「じゃ、ここ訳してみて?」 「知識があった方がありとあらゆる場面で役に立つ。だから学生は寸暇を惜しんで勉強すべきなのだ」 「うん。正解」 今日も愛衣先生に英語を教えてもらっていた。 「ちょっと休憩しようか」 「うん」 私はリビングへ行って…

僕らの旅路12 如月愛衣の辿った道

図書館での日々 学校に行かなくなり、図書館で過ごすようになってから大体3年程が過ぎた。気がつくと私も中学生に上がるくらいの年になっていた。年齢で言うと14歳くらい。 その頃に一人の先生と出会った。今の私があるのは間違いなく先生のおかげで、人…

僕らの旅路11 如月愛衣という女性

如月先生の初授業 窓から差し込んでくる日光と共に目が覚めた。リビングへ行くとまだ綾は起きてなかった。歯を磨き、顔を洗って、リビングのカーテンを開けると暖かい陽の光が入ってきた。今日はいい天気だから公園に行きたいな。 綾が目覚めるまでソファに…

僕らの旅路10 家庭教師との出会い

詩を書くようになって一週間が過ぎた。この間、僕は綾に褒められてその気になり、時々ブログに詩を上げ続けていた。綾が遊んでいる様子をUPした記事なんかに比べたら全然大した反響はなかったけど、それでも少ないながら見てくれる人はいた。僕はそれで満足…

僕らの旅路9 落ち着いた日々

この地に腰を落ち着けてはや一ヶ月。この間僕らは平日の昼間を狙って水族館や植物園で過ごしたり、図書館で本を読んだりしていた。僕らは二人ともこの生活スタイルが気に入って、しばらくそんな風に日々を過ごしていた。 (いっその事しばらくこのままでもい…

僕らの旅路8 綾の幸せとは

そして僕らは旅に出た。新しいまだ見ぬ自分たちに出会う旅へと。 最初は旅館に泊まった。一泊して翌日にまた出発するということを繰り返して気がつけば結構北の方まで来ていた。地元に比べると平均気温に結構差がある。これ以上進むとこれからの季節寒いかも…

僕らの旅路7 旅

暑い日が続いた。だけどそんな夏も日一日と過ぎて行き気がつくと9月が迫ってこようとしていた。そう。夏が終わる。綾も夏休みが終わって新学期が始まる。結局まだ綾と僕は一緒に過ごしているが、9月が来たら綾はどうするのだろうか? 「ねぇ、綾学校が始まっ…

僕らの旅路6 

僕のところへ綾がやってきてから2週間程経った。その間一緒に公園で遊んだり図書館で本を読んだり家で共に料理を作ったりもした。結構充実した日々だったけれど、一つ問題があった。それは金銭的な問題。綾の分の生活費を僕自身の稼ぎで賄うことが難しくな…

僕らの旅路5 綾の涙

帰りの電車の中で綾は疲れて眠ってしまった。隣の僕にもたれながら。その腕にはイルカのぬいぐるみがしっかりと抱かれている。水族館を見終わった後お土産屋さんで買ったのだ。本当に12歳の子供らしくて微笑ましい。 結局駅に着いても綾は眠そうだったのでお…

僕らの旅路4 水族館へ

当日の朝 「シャッ」とカーテンの開く音がした。2日目なのでさすがに誰が開けたのかはすぐに気がつく。案外綾は早起きらしい。僕はまだ眠いのでしばらく布団の中で微睡んでいた。しかし、昨日の約束を楽しみにしている綾は僕を起き上がらせるべく布団を引き…

イマジナリーフレンドバトラー

僕がバトラーと出会ったのは両親に森に捨てられた時だった。僕は少々人より霊感が強いらしく時々家の中や外出先でも霊の気配を感じ、幼かったために不用意に両親や周囲の人間にそれを知らせてしまうことがあった。そのためか両親は僕を疎ましく思うようにな…

僕らの旅路3 二人暮らし

「いただきます」 そして、僕等は昼食を摂っていた。今日のお昼ごはんは冷やしうどん。リュック一杯に荷物を詰めて帰ってきた綾を迎えてササッと作った。僕としてはいつも通り何の感慨もなく食べていたけど、綾はとても美味しそうに食べてくれていた。 「そ…

僕らの旅路3 二人暮らし

「いただきます」 そして、僕等は昼食を摂っていた。今日のお昼ごはんは冷やしうどん。リュック一杯に荷物を詰めて帰ってきた綾を迎えてササッと作った。僕としてはいつも通り何の感慨もなく食べていたけど、綾はとても美味しそうに食べてくれていた。 「そ…