そして、僕は図書館に来ていた。何となく、四国とかいいかもしれないなと思う。暖かそうだし、自然も豊かだ。
図書館の旅行系のコーナーで立ち読みしながら四国の美味しそうなうどんの写真を見て、今日は暖かい物を食べたいなと夕飯のメニューを考えていた。まだちょっと早いがお鍋とかいいかもしれない。
そして自然科学のコーナーで植物の本を選んで机に座りながら読む。
（・・・それにしても地球上には大量の植物があって、とても覚えきれないな）
僕が覚えている品種なんてほんのごくわずかだ。だけど、せめていま花壇に咲いている種くらいは名前を覚えておきたい。しかし、ペラペラと捲っていても、どこに載っているのか分からなかった。そして飽きてきたので、今度は仏教のコーナーで適当に何冊か抜き出して読むことにした。
（・・・旅に出るなら、ついでに寺院とか神社巡りというのも楽しいかも。色んな神社へ行って色んな神様に触れる。うん、いいかもしれない。）
それから２時間くらい読んでいたがお腹が空いてきたのでそろそろ帰宅することにした。
帰りにスーパーに寄って、タラと白菜と人参を購入し、家に帰って鍋を作っていた。作りながらちらりと花壇の方を見たが、やはり今日も斑猫の姿は見えない。
（・・・会いたいな）
この地へ来て、一人暮らしをして少し経つが、一人きりの生活に寂しさを感じているのかもしれない。花壇の植物たちも大いに僕の心支えになってはいるが、やっぱり猫は他の生き物とは違う。ペットとして家で一緒にいれたらどんなに幸せだろう。お金ならあるんだし、いっそのことペットショップで猫を買ってしまおうかな、とも考えたが僕はやっぱりあの茶色の猫とまた会いたいのだと思う。
（今夜の夢の中ででもまた会いたい。そして公園で一緒に食事でもしたい）
夕飯を食べ終えて、日課のランニングを済ませ、帰ってきてお風呂に入った。温まった体でノートパソコンを起動させ、四国の事を調べた。いくつか旅館や泊まれる寺院の情報を調べてみる。
（・・・まあ、一週間くらい向こうでのんびりするのも悪くないな）
そろそろ寒くなってきたし温泉を巡るのも悪くない。文豪に纏わる旅館とかもあるみたいだし、そこがいいかな。
その後、ブログで今日の日の出来事を記す。
「今日は図書館へ行ってきて、鍋を食べました。白菜を今年初めて食べましたが、タラと相まって美味しかったです。そろそろ寒くなってきました。四国の温泉へ旅に出ることを考えています」
そんな風に現況をブログに記し、パソコンを閉じる。さて、音楽でも聞きながら布団に入ろう。
モーツァルトの睡眠用の音楽を聴きながら、布団で横になると、疲れからすっと眠ることが出来た。やっぱり音楽はいい。心が落ち着く。
翌朝、目が覚めるとすぐに花壇をチェックした。少し肌寒いが、いい天気だ。今日も変わりなく咲いている花々を調べて回る。大丈夫そうだ、どの子も元気に咲いている。
だけど残念な事に今日も茶猫の姿は見えない。期待して失望するのにも疲れてきたのでそろそろ待つのを辞めようかなと思う。あの茶猫とはあの時きりの出会いだったのかもしれない。
朝ごはんに目玉焼きと味噌汁を作りながらぼんやりと考えていた。僕は故郷に絶望して身一つでこの地へやってきた。そして居心地のいい街で、無事に住居を手に入れて、幾つかの不思議な出来事と遭遇した。
（パワーストーンと猫か・・・）
これらの出来事は何を僕に教えようとしているのだろう。僕はどこへ行こうとしているのか。何を選択する事が今の最善なのか。
最近いつもその事が頭の中を占めている。だけど今の僕にはそれを解決する術を持たない。今の僕には能力がない。誰かに教えを請うべきか？
「いただきます」
味噌汁に加えて鮭も焼いて、一汁二菜の朝食を摂る。今日も美味しい。こんないい家に住めて、花壇もあって、図書館で本も読める。チラシ配りという毎日の日課もあって何不自由ないのだけど、僕は・・・・。
（・・・僕は生まれてきた意味がどうしても知りたい）
ズズッと味噌汁を啜りながら思考に沈んでいった。人は魂を成長させるため、学びのために地上に生まれてくると言うが、僕の場合は何故この人生を選択した？何故生まれてきたのか？
（前世で何があったか分からないけど、何故生まれてきたのか。誰かに視てもらったほうがいいかもしれない。旅行に行くのもいいけれど・・・）
花壇の世話もあるし、旅に出るのはもう少し後でもいいか。
洗い物を済ませた後でネットでこの辺りの鑑定師について軽く調べてみた。なるだけ信頼できる評判のいいところを選びたい。検索してみると結構出てきた。
（それ程都会の方でもないけど、割といるものだ）
一番上から順に見てみると前世やオーラを視てくれる所が多い。一番腕が良くて相性が良さそうな所はと・・・。
（・・・ここがいいかな）
ホームページには「麗先生の鑑定相談所」と書かれていた。２０分の霊視で６０００円。ホームページのプロフィールによると、生まれた頃から霊能力があって、この能力で迷える人々を救いたくて、鑑定師になったと書かれている。他のサイトでの評判も見てみたが、
「気さくなお人柄でとても話しやすくて、親身になってもらえました」
「体の症状で悩んでいた所、ずばりと原因を言い当ててくれました。ありがとうございました」
など、どこも絶賛の声が多い。
（良さそうだな。ここに行って今悩んでいる事を聞いてみようか）
そして僕は予約を取るべく、iphoneを手に取った。
