静悟の文学的空間

小説、読書感想、宮座賢治などについてのブログ

小説

僕らの旅路10 家庭教師との出会い

詩を書くようになって一週間が過ぎた。この間、僕は綾に褒められてその気になり、時々ブログに詩を上げ続けていた。綾が遊んでいる様子をUPした記事なんかに比べたら全然大した反響はなかったけど、それでも少ないながら見てくれる人はいた。僕はそれで満足…

僕らの旅路9 落ち着いた日々

この地に腰を落ち着けてはや一ヶ月。この間僕らは平日の昼間を狙って水族館や植物園で過ごしたり、図書館で本を読んだりしていた。僕らは二人ともこの生活スタイルが気に入って、しばらくそんな風に日々を過ごしていた。 (いっその事しばらくこのままでもい…

僕らの旅路8 綾の幸せとは

そして僕らは旅に出た。新しいまだ見ぬ自分たちに出会う旅へと。 最初は旅館に泊まった。一泊して翌日にまた出発するということを繰り返して気がつけば結構北の方まで来ていた。地元に比べると平均気温に結構差がある。これ以上進むとこれからの季節寒いかも…

僕らの旅路7 旅

暑い日が続いた。だけどそんな夏も日一日と過ぎて行き気がつくと9月が迫ってこようとしていた。そう。夏が終わる。綾も夏休みが終わって新学期が始まる。結局まだ綾と僕は一緒に過ごしているが、9月が来たら綾はどうするのだろうか? 「ねぇ、綾学校が始まっ…

僕らの旅路6 

僕のところへ綾がやってきてから2週間程経った。その間一緒に公園で遊んだり図書館で本を読んだり家で共に料理を作ったりもした。結構充実した日々だったけれど、一つ問題があった。それは金銭的な問題。綾の分の生活費を僕自身の稼ぎで賄うことが難しくな…

僕らの旅路5 綾の涙

帰りの電車の中で綾は疲れて眠ってしまった。隣の僕にもたれながら。その腕にはイルカのぬいぐるみがしっかりと抱かれている。水族館を見終わった後お土産屋さんで買ったのだ。本当に12歳の子供らしくて微笑ましい。 結局駅に着いても綾は眠そうだったのでお…

僕らの旅路4 水族館へ

当日の朝 「シャッ」とカーテンの開く音がした。2日目なのでさすがに誰が開けたのかはすぐに気がつく。案外綾は早起きらしい。僕はまだ眠いのでしばらく布団の中で微睡んでいた。しかし、昨日の約束を楽しみにしている綾は僕を起き上がらせるべく布団を引き…

イマジナリーフレンドバトラー

僕がバトラーと出会ったのは両親に森に捨てられた時だった。僕は少々人より霊感が強いらしく時々家の中や外出先でも霊の気配を感じ、幼かったために不用意に両親や周囲の人間にそれを知らせてしまうことがあった。そのためか両親は僕を疎ましく思うようにな…

僕らの旅路3 二人暮らし

「いただきます」 そして、僕等は昼食を摂っていた。今日のお昼ごはんは冷やしうどん。リュック一杯に荷物を詰めて帰ってきた綾を迎えてササッと作った。僕としてはいつも通り何の感慨もなく食べていたけど、綾はとても美味しそうに食べてくれていた。 「そ…

スピリチュアリティワールド3 それからの僕ら

宣伝活動 僕は最初こんな素晴らしい曲をネットなんかに上げたら大変な騒ぎになって困ってしまうのではないかと心配していたが、杞憂だったようだ。数日経ったけど反応は微々たるものだった。「そりゃそうよ。全く無名の作者が上げたものがいきなり大ヒットと…

スピリチュアリティワールド2 目覚め

明依の目覚め 「う、ん・・・」少女が目を覚ますまで静かに本を読んで過ごしていたがようやく意識を取り戻したようだ。僕は読んでいた本を閉じて彼女が自然に目を覚まして起き上がってくれるのを待っていた。「あれ、ここどこ?」ぼんやりとした表情でそう呟…

スピリチュアリティワールルド1 始まりの朝

それはそろそろ夜が明けようとしている頃の事だった。誰もいないはずのマンションの部屋で誰かの声が頭の中に響いた。(痛い、苦しい。誰か助けて!)「何だ?誰だ?何処から聞こえてくる?」 辺りを見回してみるが、部屋の中はいつもと変わらない殺風景なワ…

僕らの旅路2 朝

二人の朝 カーテンが開けられる音が聞こえた気がした。早朝は肌寒さを感じさせ、蒲団に包まる至福から抜け出せずにいた。だけど一人暮らしの部屋でゴソゴソと自分以外の足音が聞こえるのを不審に思って少し寝足りない体を無理に起こして部屋の様子を見回して…

僕らの旅路1話 出会い

家出少女との出会い その時はさっぱり分からなかった。彼女の言った言葉の意味が。彼女はこう言ったのだ。「私と共に世界を見よう」と。 その夜は満月だった。日本文学全集から三島由紀夫の巻を本棚から取り出して2時間ほど読みふけっていた。窓の外では周…

気がつくと天界にいた

そこは僕らが作った楽園だった僕と植物と天使と僅かな猫や他の動物たちによって構成されている楽園。 白いベッドで目が覚めた。その姿勢のまましばらく、ぼんやりとして、体と心が覚醒してくるのを待った。 この場所に来てからもう一ヶ月か。随分と色んなも…