静悟の文学的空間

小説、読書感想、宮座賢治などについてのブログ

2021-06-29から1日間の記事一覧

孤人物語 僕という人間

天涯孤独 いつものように自室のゆったりとしたソファに深く沈み込んで何時間も集中して本を読んでいると、目の前の山積みの書物から一冊がドサッとこぼれ落ちた。何が落ちたのかなと思って見てみると、漱石のこころだった。こころは漱石の中で一番気に入って…

穏やかな陽

暖かな陽だまりの中彼方さんは陽気に散歩に出かけた。アパートの裏に広がる森を抜けてゆく。陽の光の暖かさを感じながら、昨日ネットで見た葉についての知識を光を反射する葉達を仔細に観察してみた。つぼみと芽と木々の葉の生え方、葉の形について。やはり…

僕らの旅路15 絵本を読んで

せっかく出会えた良き先生と直ぐに別れさせるような事はしたくなかったので、いずれ旅立にせよ、しばらくはこの地に逗まる事に決めた。近頃、以前にも増すペースで愛衣先生はは綾の下へ授業にやってきてくれている。今日も夕方から愛衣先生は僕らのマンショ…

僕らの旅路14 綾と空のこの土地での毎日

悪夢 ハッと目を覚ますと夜中だった。昔の夢を見てしまった。あの忌まわしき実家にいた頃の夢。私を殴る母親とそれを眺めている義理の父親。こんな夢を見たのは久しぶりだ。怖くなって、辺りを伺うと、いつも通り変わらないマンションの自分の部屋だった。 …

インディゴチャイルド12 お姉さんがやってきた

僕の家にご招待 「へえ~。ここが和君のお家か」 「うん。どうぞ、入ってよ」 離れていたのは少しの間だったはずだけど、何だか一年くらい離れていたように感じた。いざ、家の中に入るとお姉さんは興味ぶかそうに家の中を見回していた。ガチャッとドアを開け…

インディゴチャイルド11 お姉さんの新しい家へ

お姉さんとの再会 山を降りて、IPHONEのマップアプリを片手にお姉さんのマンションへと向かった。住所によると、どうやらお姉さんのマンションは、山から電車で一時間程の所にあるらしい。この距離なら僕が住んでいたあの家からもそう離れていない。お姉さん…

インディゴチャイルド10 お姉さんの声

下山して部屋に戻って考えていた。あの時山頂で聞こえた声は間違いなくお姉さんの声だった。もう何年も会ってなくても聞き間違えることはない。今どうしているだろう?猛烈に今お姉さんがどうしているか気になった。 あれから何年もそれこそ僕が大きくなるま…

インディゴチャイルド9 僕を救い出してくれた魔法使いの女の子の話

父親による虐待 昔の夢を見た。父親に頬を殴られて公園でひとしきり泣き叫んだ後の事だった。 家に帰りたくない。だけど外も寒い。その頃の僕は9歳くらいだっただろうか。歩いて行ける川まで行って溺れて死んでしまおうかと考えていた時だった。 「どうした…

インディゴチャイルド8 山頂での出会い

植物園 セコイア並木をくぐりぬけた所にある高知の植物園に僕はやってきていた。鮮やかな花々達に癒やされ、樹木達が発する静かな空気に落ち着き、疲れた心と身体を休めることができた。今日のところはここでゆっくりと休んで宿へ帰るとしよう。 四国にはお…

インディゴチャイルド7 自分を探す旅

鑑定を受けてから大体一ヶ月が過ぎた。この間、僕は図書館に足繁く通ってはいろんな知識を吸収することに専念していた。主に文学、仏教、自然科学の分野の本を読み漁っていた。勿論、旅先の情報収集も怠らなかった。気分転換に朝夕の散歩も日課として行って…

インディゴチャイルド6 麗先生の鑑定

紫苑鑑定所は家から30分程の距離にある街中の一角にあった。到着する前、タクシーに乗っている間も頭の中は鑑定師に相談したいことで一杯だった。20分の間に何を優先して視てもらうべきか考えたのだが、やっぱり僕は過去の前世の事より未来の事を知りたいと…