そして僕らは旅に出た。新しいまだ見ぬ自分たちに出会う旅へと。
最初は旅館に泊まった。一泊して翌日にまた出発するということを繰り返して気がつけば結構北の方まで来ていた。地元に比べると平均気温に結構差がある。これ以上進むとこれからの季節寒いかもしれない。
「ねぇ綾。ちょっとこの辺で腰を落ち着けないか?」
「そうね」
それから僕らはウィークリーマンションを探してきてそこに住まうことにした。家具もついていて二人それぞれの部屋もある。家賃もそんなに高くなくて僕は気に入っていた。
しかし夜テレビを見ながら寝入ってしまった綾をベッドに運ぶ時などふと思うのだ。やっぱり法的に見たら僕は誘拐犯で少女を良からぬ道へと誘いこんでしまったのではないかと。
ネットでこの近辺の観光地情報を調べてマップを頭に入れてゆく。一応旅ブログを作るのも目標の一つだから、これも仕事といえなくもない。観光地にはどっちみち行く予定だったし一石二鳥だ。
そして僕らは名の知れた神社へとやってきていた。
「すごい大きいね」
「ああ」
鳥居をくぐっても境内はすごく広い。お守りやおみくじを売っている所を通りぬけて、僕らは参拝した。僕は最近抱いている罪悪感について拝みながら考えてみた。
(僕は間違っているのだろうか?)
だけど神様に祈ってみると不思議と罪悪感は薄れた気がした。僕はそれ程悪いことをしている訳ではないのかもしれない。
綾の方を見ると目を閉じて熱心に祈り続けていた。
「ねぇ、さっき神様に何を祈っていたの?」
「別に。良いことあるといいなって」
綾の内心は相変わらず伺い知れない。こうして共に旅に出るくらい打ち解けたつもりだったけど、まだどこか壁がある気がした。だけど彼女の生い立ちを考えてみたら仕方のないことなのかもしれない。何れ何でも話してくれるようになるさ。と自分を励ました。
この辺りの神社や寺を観光して大体メジャースポットを行き尽-.くした僕らは相変わらずウィークリーマンションに住んでいて、毎日何をやっていたかというと、元の場所にいた頃と変わらない本を読んでいた。一緒に過ごすようになって徐々に分かってきた事だが、綾はその年の割には結構な本を読んでいた。
「僕も好きだけど綾も物語好きだよね。一番好きなのは?」
「源氏物語だよ」
最初に大人っぽい子だと思っていたのは間違いじゃなかったみたいだ。読んでいるものも大人向けのものが多い。僕がこのくらいの年には漫画ばかり読んでいたものだが。だけど玉にこっちでも動物園や水族館へ出かけることもあった。そういった時には年相応の反応ではしゃいでいた。僕は綾の色んな面が見れて非常に嬉しかった。だからだろう。余計にあんないい子が学校に行かず僕とふらふらしている現状が気になってきた。今更といえば今更な悩み。綾が良いと言っているのだから、と思うが、僕は綾にもっとマシな生き方があるんじゃないかと思って、せめて僕以外に教師役になれるような大人をネットで探し始めた。